臨床例2-アトピー性皮膚炎などの難治性の皮膚病を漢方薬で治療

体の皮膚に傷や炎症反応があれば、まず抗生物質を投与すると思います。普通の細菌性の炎症なら、まずそれで治療できると思います。しかし、それでも炎症が治らなければ、慢性の難治性の炎症として、ステロイドや免疫抑制剤で炎症を抑える、というのが、西洋医学では普通のやり方だと思います。

ただし、ステロイドや免疫抑制剤を慢性的に使用すると、体が本来もっている免疫力を損ない、様々な副作用を引き起こすことになるから、なるべくなら、内服のステロイドや免疫抑制剤の服用を控えて、できれば外用薬にのみ、ステロイドや免疫抑制剤を使っていこう、というのが現在の人間に施される医学の流れとなっております。

にもかかわらず、動物の医療においては、今だに比較的安易にステロイドや免疫抑制剤の内服薬や注射を使うことが多いのが現状です。もちろんそれで治療がすぐ済めばよいですが、なかなか治らないまま、ずっと慢性的にステロイドなどを使い続けることになることが多く、そうした状態を維持することに、不安を覚える飼い主さんも多いと思います。

そこで代替医療として選択肢にあがるのが、漢方薬による皮膚の抗炎症治療です。漢方薬のもつ興味深い働きには、抗生物質が効かないような、細菌性以外の炎症反応にたいする抗炎症効果があります。あとは、長く漢方薬治療を続けたとしても、免疫力を下げるところか、上げることになるという利点があります。

抗生物質は、細菌が引き起こす炎症を抑える効果をもつので、普通の動物病院では、一つの抗生物質の効果がない場合、いろんな抗生物質や抗真菌剤などを駆使して、炎症を治療しようとします。また病原菌を探すために、細菌やカビの検査をしたりします。しかし、炎症の原因が細菌性のみでないことも多く、その場合には原因と思っている細菌を見つけることができず、治療が行き詰ってしまい、結局ステロイド治療に逃げ続けることとなります。

また動物のアレルギー性皮膚炎の原因を見つけるために、血液検査で、アレルゲンをみつけようとする場合もあります。これも、食事を、動物病院でだすアレルギー食に変えるためにするのでしょうが、療法食で治療が終わることはほとんどなく、むしろ、こんなに生活環境の中にアレルゲンがあるから、治療ができない、という言い訳に使われることが多いです。(食事のみのアレルギー性皮膚炎は、全体のアトピー性皮膚炎の10%以下でして、これは食事を食べてすぐ反応があるので、血液検査などしなくても、すぐ分かります。)

ハルペッツクリニックでは、抗生物質とともに漢方薬をつかい、難治性の炎症にも対処するようにしています。もちろん、当病院に来る前に、慢性的にステロイドを使用している場合が多く、そのステロイドを減らしながら無くしていき、同時に損なった免疫力を補う漢方薬も使いながら治療していきます。

この治療法は、アトピー性皮膚炎のような痒みを伴う難治性の皮膚病に有効です。

フレンチブルのジョンちゃんは3歳。外耳炎やお腹の皮膚病が慢性化して、アトピー性皮膚炎となり、ステロイドを毎日10mgも飲んでいて、このままでは、大丈夫なのか心配になり、ハルペッツクリニックに来院されました。まず脱ステロイドした後、約3ヶ月の漢方薬治療で、ほぼ体質改善は完了し、皮膚病は治り、漢方薬もやめることができました。

それから3年たちますが、夏になると膿皮症がでて、漢方薬を飲んで治療しますが、夏以外は、漢方薬なしでもきれいな皮膚でいます。(実は一年中漢方薬を少量でも飲んでもらったほうが、夏の膿皮症もかなり防ぐことができると思いますが。)もちろん耳も炎症を起こすこともほとんどなくなりました。ただ幼い時から飲んでいたステロイドの副作用と思われる、腰椎の石灰化が発見されて、腰のヘルニアにならないよう予防しています。これは、1歳未満の骨の成長期から、すでにステロイド治療をしている皮膚病の子に、すごく多い症例です。

それ以外にも、足の指の間に繰り返す皮膚の炎症をつくる、真在性膿皮症とよばれるような皮膚病にも効果があります。

ビーグルのどんべえちゃんは、8歳すぎから、両手足の指の間が赤く炎症を起こし、それを繰り返すことを3年以上つづけてきました。この一年はステロイドもずっと内服してきました。大学病院で精密検査をすると、骨にまで炎症が広がっているので、難治性で治らないといわれたそうです。手先足先がパンパンに腫れて包帯で巻かれた状態で来院されました。抗生物質に加え、炎症を落とす漢方薬で2週間治療すると、包帯もとれ、腫れもだいぶ引きました。あとは、最低量の漢方と抗生物質を続けて、この1年半の間は、炎症が繰り返すのを防ぐようにしています。ただし、漢方薬を止めることができるほど、完治はしないのが問題(漢方薬を止めるとまた炎症がおこってくる)ですが、年齢のこともありますし、体に悪いものでもないので、このまま、最低量の漢方を続けていくつもりです。(おそらく精神的な要因が根本に横たわっているものと考えていますが、その治療まではしていません)

彼の治療には、後日談があります。皮膚炎をおこす前足の先に腫瘍ができまして、外科的に摘出して、病理検査に送ると、悪性の腫瘍であることが判明しました。ほかにも背中や胸にも腫瘍があるので、すべて外科的にとるのはできないので、免疫力をあげるように漢方薬をのんでもらうことにしました。それから1年たった今も、そうした腫瘍も悪くならずに、元気にすごしています。もう13歳になりました。


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