臨床例13-犬猫の乳腺腫瘍(炎症性乳癌など)の漢方薬治療

メスの犬猫に、若いうちに避妊手術を勧める理由は、乳腺腫瘍になりにくくするためです。(もちろん子宮蓄膿症を防ぐという理由もあります。)

およそ10歳のダックスのヒナちゃんは、避妊手術をしていませんでした。乳腺に腫瘍ができ、相談に見えた時には、乳腺腫瘍の皮膚がひどく赤く炎症をおこしてひろがっていて、炎症性乳癌の様相を呈していました。炎症性乳癌は、悪性度と転移度が高く、癌細胞も広がっているため、西洋医学でも、手術をせず、抗癌剤や放射線治療を選択します。ここで、ヒナちゃんの飼い主さんは、漢方薬治療を選択しました。

それから3年以上の間、ずっと漢方薬を飲んでもらっていますが、腫瘍は大きくなることなく、体調は良好の状態を維持しています。ただ漢方薬を減らすと、腫瘍が大きくなるので、同じ量の漢方薬を飲んでもらっています。副反応としては、漢方薬の補陽作用により、元気食欲が増し、活動量が以前より増加したことを、まるで若返ったようだと飼い主さんは喜んでいます。この3年の間、他の病気にもなることなく、健康にすごしています。

腫瘍の最良の治療法は、その腫瘍を外科的に完全に摘出することだと思います。腫瘍が良性でも悪性でも、こうすれば、後の憂いはありません。

しかし、いろいろな事情で、手術ができない場合があります。西洋医学では、この時に、抗癌剤を使うでしょう。(大学病院などでは放射線治療も) しかし、この抗癌剤の毒性はとても強く、それを患者の体内にいれてコントロールするのは至難の業です。いうなれば抗癌剤は、攻撃の薬ですが、正常細胞まで攻撃しますので、難しいのです。

一方、東洋医学では、漢方薬で免疫力を高め、癌細胞が増えないようにします。これは守備の薬ですので、とても安全で、使い易いです。守備を固めている間にガン細胞がアポトーシスという細胞死をむかえてくれればよいですが、ガン細胞の生命力が強い場合は、ずっと守りを固めておかないといけない、つまり漢方薬治療をつづけなければいけない、ということが欠点であります。

ただし、漢方薬が癌細胞を抑える以外にも、補陽補陰効果といって、特に老齢の身体の健康に良い効果をもっていますので、漢方薬を継続することが有意義だと考えてもらうことができるのです。

猫のスコテッシュフォールドのハロちゃんは、6歳の時に避妊手術をしました。が、その1ヶ月後、乳腺全体に多数の腫瘍ができてしまいました。もしかすると、細胞レベルで存在していた乳腺腫瘍が、手術の影響による免疫力低下で、活性化したのかもしれません。

それぞれの腫瘍は小さかったのですが、数が多く、範囲が広がっていたましたし、手術をしたばかりでしたので、飼い主さんは、漢方薬治療を選択されました。漢方薬を飲みだして半年で、触れるような腫瘍はなくなり、もう2年近くなるのですが、健康な状態を維持しています。ただし、1年後に嘔吐を繰り返すなどで体調を崩した時に、また腫瘍が再発したことがあるので、漢方薬を止めるのは危険と考えて、2年間は継続してもらいました。ただ年齢がまだ若いので今は、一度漢方薬をやめて様子をみています。


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