臨床例12-猫の慢性腎不全の漢方薬治療

東洋哲学には陽(太陽)と陰(月)で物事の生成を二元論的に考える概念があります。それにあてはめれば、犬は陽、猫は陰、の生き物だと思います。

もちろん若い時は、皆陽ですし、年をとれば皆陰、かもしれませんが、生き物それぞれの特徴を大雑把に表現するなら、やはり犬は元気一杯で明るい陽の生き物で、猫はおとなしくて、慎み深い陰の生き物といえるかもしれません。東洋医学的に考えても、犬は身体の中でエネルギーを放つ陽の器管、例えば心臓、肺や胃などを駆使し、その結果年をとると、それらの慢性疾患になることが多く、一方、猫は身体の中で、身体の機能を裏側から支える陰に分類される器管、腎臓や大腸、などを使役するために、年をとって慢性の腎不全や便秘になることが多いです。

ただ人間の場合はすべての病気になるので、どちらかに分類するのは難しいですが、やはり陽と分類される男性は一般的に陽の器管の病気が多く、陰に分類される女性は陰の器管の病気が多いといえるでしょう。

前おきが長くなりましたが、老齢の猫には、慢性の腎不全が多いです。
実際、人間のように人工透析ができない猫の場合、慢性の腎不全で亡くなる場合は、寿命を全うして、老衰で亡くなることと考えられています。

腎臓病の西洋医学的な治療は、主に点滴治療となります。なんらかの理由で一時的に腎機能が落ちる、急性の腎不全の場合は、もちろんこの点滴治療が第一選択の治療法となります。しかし、年齢とともに次第に腎機能が衰えることになった慢性腎不全では、正常に機能している腎臓の細胞は少なくなっていますので、残っている正常な腎臓の細胞を活性化して、少しでも腎機能を高めようとする、漢方薬を使った治療が有意義になります。

点滴治療は動物病院で継続して行われなければならず、老齢の猫には、かなりの精神的ストレスになりますし、飼い主さんの経済的な負担も大きいです。一方、漢方薬治療はお家で飲ませてもらえばよいので、薬を上手に飲ますことさえできれば、飼い主さんにとっても猫ちゃんにとっても、いろんな意味で、優しい治療法だと思います。

もちろん、腎臓の機能は、いつかは終末を迎えるのですが、漢方薬治療では、その過程がゆっくりとしていて、飼い主さんの心の準備をすることができ、終末医療としてもすぐれていると思います。

猫のショーシャちゃんは18歳。以前から慢性の腎不全(はじめBUNが68.3、CREが3.4で、1週間当病院で静脈点滴治療をしてもBUNは3.7まで落ちたが、CREは3.7のまま)ため、病院での点滴治療をやめ、在宅での漢方薬治療をすることにしました。1週間に一回、様子をみせにきてもらいましたが、脱水状態は、常にありまして、皮下補液をしてもすぐ、脱水してしまう、末期の腎不全の状態でした。しかし、漢方薬治療の間、元気食欲ともに大変良い状態で維持できていました。

残念ながら、4ヶ月ほど経過したある日、急性心不全で突然亡くなってしまいました。ただ、心の準備はある程度していましたし、苦しむことなく、すっと亡くなってくれたようで、飼い主さまは、その死を寿命として、受け入れていただけました。

猫のグレコちゃんは19歳。末期の慢性腎不全で、主として漢方薬治療をして、5ヶ月、ゆっくりと衰えて、静かに亡くなりました。入院することも一度もなく、飼い主さんと最後の時間をゆっくりすごせたこと、喜んでもらえました。


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